『端正な折り紙』に折り図が収録されています(画像はamazonリンク)。
1:√2の紙から2つの正三角形を作る場合、切り出し方は図1のような形になる。ちょっと考えると「無駄な折り筋がつかないように」という条件から、まずは中心を通る線を折り出さなければいけなさそうだ、ということが分かる。実質的には、この線をどう折り出すかという問題であると考えてよさそうだ。
図1 2つの正三角形の切り出し配置。
面白いのは、シンプルな問題ながら、一般的に知られている正三角形の折り出し方法が使えない事だ。
その上で、不可能ではなさそうというのも想像できるという、とてもよくできた問題だ。
さて、どうする?
考えられる方法は、
1.正三角形以外の部分で30度を折り出し、それを使って点を折り出す
2.シルバー矩形の対角線の√3を利用する(※2)
3.中心点から、なんらかの形で60度の線を折り出す
あたりか。
無駄な折り筋をつけないという制約のため、どちらにしても一筋縄ではいかなさそうだ。
※2 √3が折り出せれば、正三角形も折りだせると考えて良い。√3自体は簡単に折り出せるが……
1.の場合、そもそも60度を折り出す方法が限られているのが問題になる。というのも、折り筋をつけられるスペースが限られているからだ(図3)。
図3 一般的は60度の折り出しでは、余計な折り線がついてしまう。
一般的な60度の折り出しは使えないので、エレガントでは無いけれど、長方形のカドの部分でチマチマと60度を折り出して、それを大きくして行く方法で一応折り出す事ができそうだ(図4)。
図4 切り出す三角形の外側の部分を使えば、とりあえず角度は折り出す事が出来る。ここから長さを写すようにしていけば、一応必要な点は折り出せる。
2.の場合、1と同様に基準に出来る線が少なすぎるのが問題となる。不可能ではなさそうだが、1の方法同様に小さく折り出して大きくしていく必要がありそうだ。なんにしても泥臭い解しか出てきそうに無い
で、いろいろと考えていてふと思いついたのが3.、2つの点を同時に合わせる方法で、これを使うと必要な折り筋を直接折り出す事が出来る(図5)。
図5 実際にやってみると分かるが、表裏で合わせなければいけないので折りにくい。
実はこの方法、「2点p1, p2 2本の直線l1,l2が与えられたとき、p1をl1上に重ね、かつp2をl2上に重ねる」といういわゆる6番目の折り紙公理(※3)を使っている。
存在は知られているものの、実際にはほとんど使われない公理を使う意外性、つける折り筋の少なさ、また表裏で同時に基準点を合わせる実用性の無さまでも含めて、面白い解なのは間違いなさそうだ。
※3 紙を折るための操作の規則。7種類存在することが知られている。
参考リンク:K's 折り紙:紙による作図
Wikipedia 折り紙公理
食事が終わる頃に見つけて、ブリルさんに報告できた。という事で、BOS購読権をゲット。おめでとう>私。
ちなみに、ブリルさんの用意していた答えは、近似値を使った折りやすい方法で、まさか力技(?)で解いてしまうとは思わなかったと呆れていた。
A:シルバー矩形から馬を2体折る時に使えます。
まあ実用性はともかく、よい問題に対して面白い解が出せたのが、本人にとっては面白かったというのが重要なのです。