『Origami Aquarium』に適当なサメの作品がなかったので創ったもの。
創作の経緯もあり、作品の新しさや面白さなど創作者側の趣味は控えめで(当社比)、折り図化まで含めた総合的な完成度を重視した作品です。
サメを立体的に折るとかっこいいというのをしっかり見せたのは、グエン・フン・クオン氏の作品が最初でしょうか。
https://www.flickr.com/photos/blackscorpion/8696372676/
同じくらいの時期に、Nguyen Ngoc Vu氏も創作されているので、ベトナム・オリガミ・グループでの競作イベントがあったのかもしれません。
https://www.origami-shop.com/en/origamivn-colorized-expanded-edition-with-defect-xml-1751-12407.html
とにかく、この時期に複雑なサメの折り紙の形がある程度確立されたのではと認識しています。
たった一つの作品を境にして、その題材の折り紙の形がガラッと変わることがあります。その最初の形を見つけるのは本当に大変なのですが、実は二番手以降は近い目的地が見えているので随分と楽になります。今回、すでにいくつかの作例がある中で創作した本作でも、この事をとても強く実感しました。
それと同時に、同じことをするだけでは二番煎じとなってしまうので、より良い・面白い作品を創作するためには、技術・造形など差別化が必要になります。最低でもこれまでの作例と間違われないくらいの差別化はしたいところで、創作者の腕・個性の見せ所といえるでしょう。
話がそれた。サメの話に戻そう。今回の創作目標として、
・折り図化前提なので、難度や手順を「常に」考慮すること。
・難度の問題から歯は割愛、その代わりエラは折り出したい。
・見栄え重視で立体的に。できればインサイドアウト。
あたりを考えて進めます。
どこから創ってもいいのですが、ここ数年で頭部を残してお蔵入りの魚がいくつかあったので、同じ轍を踏まないようにまずは頭部から手をつけてみます。課題のエラは、可能であれば構造のヒダをうまく利用、そうでなければカドを出しておいて段折りするのがよさそうです。
とりあえず蛇腹でそれっぽい形を折ってみます。まあ悪くなさそうではありますが、この先どうなるか。一応全体も折ってみましたが、良くも悪くも想定通りの形。なにより無理・無駄が多く面白さや美しさがない。
仕方がないので改めて構造をよく見ていると、対角線を対称軸にした方がよさそうなことがわかりました。試しにと実際に折ってみると、前の試作のイマイチさ加減が嘘のように、いい感じの形が折り出せました。エラも無理なく出ているし、胸ビレの折り出し方も合理的で悪くありません。細かい部分はともかく、尾の側を適当に拡張すればカドは揃いそうです。
ということで尾の側に余裕をもたせて再度試作。追加した部分から腹ビレが綺麗に出てきました。ただ尾ビレに余裕がない。
さらに比率を変えて試作。少し多すぎたかとも思ったものの、比率なども分かりやすいし工程も折りやすい、なにより尾ビレは多少大きいくらいのほうが見栄えがするのでこれで確定です。
最後に左右に分かれた下顎をどうするか悩んでいたのですが、被せるようにして組み合わせるというアイディアが完璧にはまりました。これで完成です。
こういう作品を安定して出力できると、折り図化等いろいろ便利なのですが、創作するときに確実にゴールすることを絶対的な前提にしてしまうのも良くない。難しいところです。