2003年のTVチャンピオンで製作した作品の写真が出てきたので、当時の話を少し。
決勝テーマは、折り紙メーカートーヨーさんのカレンダー。優勝作品が採用され、3ヶ月ずつ、4枚分の作品を用意するというものです。単純な発想としてとりあえず四季をテーマにすることを思い浮かべますが、意外性のかけらもなく、なにより題材被りもありそうなので、もう少しひねった案を考えました。
まず思いついたのは、ちょうどライトフライヤー飛行テストより100周年ということで、飛行機の歴史を辿るというようなものです。時代とイメージの違う、ライトフライヤー、飛行船、航空機、スペースシャトルかロケットという感じで4場面にまとめるという感じです。題材としては悪くはないし、うまくできれば見栄えもしそうです。ということで実際にできるかどうか少し考えてみたのですが、ライトフライヤーとか形になるのか?という問題もあり、もう少し別のものも考えてみます。
歴史を辿るというまとめ方は良さそうなので、テーマをずらしてはどうだろうか?ということで考えてみたのが、比較的得意な分野?の生命の歴史です。毎回のことですが、TVチャンピオンでは一定の期間内にある程度以上のクオリティの作品を用意しなければいけないので、ある程度見通しの立てやすい、経験のある題材等を選ぶのは大切です。
とはいえあまりにもそのままでは面白さがないので、最初の四季と組み合わせたらどうなるか……バージェスおせちというバカネタを思いついてしまったので、生命の歴史×季節で決定しました。二つの違う時間軸を重ねて表現するというのは、今回のカレンダーという決勝テーマにも合った内容です。タイトルも「5億7500万分の1年」という、割とそれっぽいものになりました。
次に決めるのはどの生物をどのようにこじつけて折るかということになります。とりあえずバージェス動物のカンブリア紀は確定として、他は雑に古生代中期くらい、中生代、新生代としてみます。つまりバージェス、原始的な魚など、恐竜、絶滅哺乳類です。
最初の1〜3月は、思いつきそのままでバージェスおせち。点数が多いけれど色さえ合わせればどうにかなりそうです。アノマノカリスを海老に見立て(学名の意味も「奇妙なエビ」だし)中心にドンと置き、あとはそれっぽい形の生き物をそれっぽい色と形に創ります。結果的に一見おせちだがよくみるとゲテモノという大変楽しいものが完成しました。
4〜6月、時代的にウミサソリとか考えてはみたけれど、季節とのこじつけが難しいく使いどころがないのでボツとなりました。代わりにこどもの日から連想して、作品の種類が少なくて済みそうなダンクルオステウスのぼりになった。吹き流しのオウムガイが個人的には好きなネタ。
7〜9月、これは悩んだけれど、時間的な問題もあり、すでにある作品をベースにしてバロサウルスのお月見にしました。ジオラマの構造的に背景がないので月をどうするかという問題があったのですが、水面に映すという会心のアイディアで解決。細かいネタですが実は月の模様も恐竜になっています。
最後の10〜12月は、クリスマスをネタにして、わかりやすく派手にマンモス&古代人サンタに決定。折る作品数も少なくて済みそうです。
題材決定で気をつけたのは、なにより4面のイメージが被らないようにということです。レイアウトや使う紙の色など、なるべくわかりやすく変えるようにしています。また、実は使用する紙の傾向も4面で変えています。それぞれホイル紙、洋紙ドライ、洋紙ウェット、和紙をメインに使っています。
当日、実際に折る際には時間との勝負となりました。実際に12時間で4面を埋める作品を折るのは、過去最も時間的にきつい内容です。なんにせよ絶対的な時間が不足しているので、一つ一つの作品を大き目に折って場を埋めるようにします。これは単純に面積だけでなく、高さも出せるので見栄えもするようになります。メインとなる作品を大きめに作ると、良い意味でのケレン味というか、ボリュームがわかりやすくなります。これについては過去の経験が役に立ちました。また、短い時間で折れる小物を多めに用意すると、手間の割に密度が高く見えるようになります。こいのぼりの波・三角錐の木などがわかりやすいでしょうか。メインとなる題材が複雑な作品であれば、解像度の差から主題がわかりやすくなるという効果もあるかもしれません。
今後TVチャンピオンのような企画があるかはわかりませんが、創作側の内容はともかく、制作関連については例えばジオラマ系の展示でも応用できるのではないでしょうか。
関連:TVチャンピオンの話(https://www.folders.jp/uc/2018/495/)